英国EU離脱とテロリズム~トミー・メイアは、第二の安重根になるか?~
今日の昼、英国の国民投票の結果が出、EU在留派が48%、離脱派が52%となって、離脱派が勝利した。
後々見返す時のため、その事件の概要を記しておこう。
News iの、この事件を扱っている記事(http://news.tbs.co.jp/sp/newseye/tbs_newseye2799971.html)から要約しつつ引用して説明するなら、この事件は、「EU残留派として活動していた英国労働党のジョー・コックス下院議員が、『ブリテン・ファースト』(EU離脱派支持者のスローガン)と叫んだトミー・メイア容疑者により殺害された」という事件である。
もちろん、この事件が国民投票の結果にどのような影響を与えたのかは、神のみぞ知ることである。
そもそも、離脱派のほとんどは当然テロを支持しておらず、関係があると言われることを侮辱ととる人もいるだろう。
さて、この事件を見て、自称歴史家である私は、安重根の事件を思い出した。
彼は日本目線では完全なるテロリストであるが、韓国では日本に対抗した英雄、義士として、記念館や石碑が造られ、記念式典が行われる程人気である。
では、今回の事件を受け、トミー・メイア記念館は建つだろうか?
結論を急ぐ前に、安重根とトミー・メイアの違いを挙げておこう。
これも、歴史にifがないために確かめようがないことだが、「彼の暗殺が韓国併合反対派に勝利をもたらした」ということがなかったのは、その後の歴史を見れば明らかだ。
対して、トミー・メイアにおいては、因果関係は分からないものの、その後彼の側が勝利している。
そうなると、彼のことを、離脱派を勝利に導いた英雄だと考える者が現れる可能性は、十分に考えられる。
では、今回の事件を受け、トミー・メイア記念館は建つだろうか?
これだけ煽っておいて恐縮だが、私は建たないと考えている。
第一に時代や事情が違いすぎるし、今彼が「ちゃんと」犯罪者として扱われていることからも、その可能性は低いだろうと思える。
しかし、そういった国家クラスの尊敬はないであろうが、同時に、彼の名が歴史に残りうることは、十分に有り得るとして憂慮している。
何度も書くが、彼の事件は、恣意的に見れば「テロによって政治的対立に勝利した事件」ととることが出来る。
このことが、他のテロの心理的動機となり、彼に続こうとテロに走る者が現れることを、私は恐れているのだ。
そうなれば、そのテロによって対立の均衡がどちらに転ぶかなどは、もはやどうでもいい。
例え百の失敗した事例があろうとも、一つでも成功した例があるのならそれに賭けるのが、追い詰められた者の心理だからだ。
今回の国民投票、あくまで交渉材料に使うだけで、実際に離脱はしないのではないかという見方も、一部ではされている。
だから、まだ悲観するべき時でないと言うのだ。